八島純子が綴る妄想短編詩集
たおやかなドレープが滴り落ちる
白い月が見えるとき
あらかじめ集めておいた
たくさんの銀色のタッセルで
屋敷中のカーテンを持ち出した。
裏庭にきれいにならべて
はしっこを銀色の糸で縫い止めた。
ぐるんとくるまって
愛猫を手招きした。
「もう、ここには誰もいないの」
少女は静かに立ち上がって
カーテンレールにくくりつけた
滴るみずいろのビロードの
おおきな、おおきな旗を
丸く切りとられた空へ向かって
悠然と、翻した。