TOKYO FMの公開収録型授業「FM Festival 2018未来授業~明日の日本人たちへ~」が11/14(水)、TOKYO FMホールにて開催された。「僕らの時代の生存戦略」をテーマに「隈研吾(建築家)×山口一郎(サカナクション)」「池上高志(人工生命研究者)×コムアイ(水曜日のカンパネラ)」が登壇し、参加大学生たちへ”未来を生き抜くヒント”を投げかけた。総合司会は脳科学者「茂木健一郎」とSCHOOL OF LOCK!のとーやま校長。さらに欅坂46の尾関梨香も特別参加し、授業の感想をステージから紹介。またこれまでに「FM Festival 2018未来授業」は10月、11月に大分会場(講師:プロ車椅子ランナー・廣道純)関西開場(講師:企業家・小笠原治)などでも開催された。
未来授業 東京会場のSESSION1は、建築家・隈研吾とサカナクション・山口一郎の異色の対談。建築と音楽という違う分野ではあれど、つくる・生み出すことを生業とする2人。山口一郎から、「音楽業界で今は、AIが作った音楽に人間は感動するのか?という議論があります。建築の世界では、AIが造った建造物について(機能面という意味ではなく)、どう思いますか?」と投げかけがあると、隈研吾は、「建築は一種の恋愛。建てたいと思っている人とデザイナーが一緒に恋愛するようなもの。お互いに夢を語り合って、信頼し合い、時にはケンカして、出来あがるまで数年間のラブストーリーを体験したいから建築物をつくる。その意味ではAIだと盛り上がりに欠ける。もちろんAIとの恋愛を楽しめる人もいるかもしれないけど」と答えました。また、山口一郎が、“RICEワークとLIFEワーク”というテーマを挙げ、「僕は、人が好きな音楽をあえて聴かないひねくれた子だった。でも、デビューして音楽が仕事ととなったとき自分がやりたいと思っていたことと違う表現をしなければと思った時に、ライスワークをライフワークにどう持ち込むかという壁に当たった。」「アマチュア時代は好きなものばかりつくっててそれが最高だと思っていたけれどメジャーになってからは、自分がつくろうと思わない音楽、例えばテレビで歌う曲やCMタイアップなど、自分で作らないようなものをオーダーされる機会が増えた。振り返って思ったのは、自分で選ばないものに向かうことで想像できない自分に辿り着く」と言うと、隈研吾は「建築家っていうとアーティストっぽくて自己表現していると思われるけどそんなことない。お金を出す人のビジョンがあって、ライスワークの比率が高い。最初はめげるんだけど、一晩寝ると、自分にとって後に繋がる種が見つかると考えるようになる」と述べました。
講義の最後で、「2020年の潮流◎年後に残るデザインとは?」を問われ、隈研吾は「自分が今までの自分を超えられたか。それを自分の判断基準にしたほうがいい。時代にとって新しいかではない。自分にとって新しいチャレンジか」と学生にメッセージを送り、「僕らの生存戦略」について山口一郎は、「10年間の下積み時代があった。親に迷惑かけて、おばあちゃんにお小遣いもらってまで、音楽を続けた。本気を通り越して“狂気”だ。生存戦略とは、それに対して本気じゃなくて狂気になれるか」と学生へ投げかけました。そして山口一郎は「隈さん、こわい人かなって思っていたんですが、クマさんのようで、とても話しやすくて」と感想を述べ、会場の笑いを誘い、対談を締めくくりました。
11/14(水)東京会場 SESSION1 16:35~18:05
隈研吾(建築家)×山口一郎(サカナクション)
授業テーマ:2020年の潮流〜不確かな未来をリードする、ニッポンのデザイン
未来授業 東京会場のSESSION2は、複雑系と人工生命などを専門とする東京大学大学院総合文化研究科教授の池上高志と水曜日のカンパネラ・コムアイの対談。「アートから生まれる生命、科学から生まれるアート」をテーマに、人間か人工知能かを見分けるテスト・チューリングテストや池上高志が関わったアンドロイドオペラ『Scary Beatuty』、そして「不死」の話へと進みます。コムアイは、「木を部屋や庭などで楽しむための盆栽と同じ概念で、『水石(すいせき)』というものがあり、自分の好きな石を拾って来たり買ってきたりして、その石を例えば『故郷のあの山に似ている』などと見立てて部屋に置いて鑑賞する。そして、頭の自分の油をその石に塗ったりする。これは、石は永遠に死なないので、自分が生きているうちにそこに同化し、自分が死んだ後にいろんな人の手に渡って生き残る。そういう不死身の芸がある」と不死についての話題を提起し、池上高志は「どうしても跡が残るものはある。それが別の言葉や別の形式をつくってその上で次のものが展開していく。進化的な長いタイムスケールとは違って、自分(個人)の人生のタイムスケールの中で不可避的に出会ってしまう死を解消しながら生きていくかが人間にとっては大切だと思う。」と述べました。事前アンケートでは、8割の学生が不死を望まないと回答。会場の学生からは、「1日を大切に生きるため、不死じゃないほうがいい。死は誰にも身近にあるのに、だいぶ離れたところにあって、もっと考える時間があった方がいいと思う。」「不老不死は望まない。人間は死ぬことに意味がある。」と意見が出ました。
講義の最後で、参加学生から「死とか不死とか話せる友人を見つけにくい。わたしは人と関わるのが得意じゃない。でも今は人と話したいと思った。この気持ちを、どこでどういう風に消化したらいいでしょう。」と質問が挙がると、池上高志は、「ひとつ言っていいですか。大事なことは、外国語と同じようにコンピューター言語を覚えること。この中に計算機プログラムかける人はいる?コンピュータープログラムが書けたらインターネットにアクセスできて世界を変えられる。海外のどんな貧しい村からでもインターネットで世界に発信して、今この瞬間に革命が起こってもおかしくない。意味のあることをやったらダメ。意味は後でつけてもらえる。考えてる暇あったら帰って勉強しろよ。」と力強いメッセージを送りました。
11/14(水)東京会場 SESSION2 18:30~20:00
池上高志(人工生命学者)×コムアイ(水曜日のカンパネラ)
授業テーマ:アートから生まれる生命、科学から生まれるアート
未来授業 東京会場には欅坂46の尾関梨香が特別参加。「未来授業で沢山学び、自ら考えてこれからのグループ活動にも生かしていきたい」と意気込みを語っていた尾関梨香は、「登壇した4名の講師はとても魅力的で、発信する力がとても強いと感じました。発信する力はこれからの未来を生きる上でとても大切だと思う。」「予測していたらつまらない。なにごとも恐れずに突き進んでいきたい」とSESSION1、SESSION2の講義の感想を述べました。
特別参加 欅坂46・尾関梨香
大分会場の講師をつとめたのは、日本記録を保持するプロ車椅子ランナーで、シドニーパラリンピックでは銀メダル、アテネパラリンピックでは銅メダルを獲得している廣道純。高1の時にバイク事故に遭い、3ヶ月後に足が治らないことを父親から告げられると「ああそうなん。ほんならもう退院しようや」とすんなり受け入れたエピソードを紹介した廣道純は、「このエピソードを紹介すると、誰からも驚かれるけれど、自分の中では、死んでいたはずなのに動けるようになった。車椅子に乗ったら自分の意思で好き勝手動けるようになった。もう治りませんよと言われたら、じゃぁもう家に帰ろうよと。落ち込みは1秒もなかった」と述べ、さらに、スポーツが得意だったことからレースの世界に飛び込み、当時のパラリンピック金メダリストへ指導してもらえるよう直談判して一緒に合宿した経験などのエピソードや、シドニーパラリンピックにおいて、パラリンピック初出場での銀メダル獲得、障がい者スポーツにおいてプロになる意味についてを紹介しました。未来への目標については、「やっぱり常に、『今』。いつ死ぬか分からないから、今日できる精一杯を1日やる」と参加した学生たちへメッセージを送りました。
10/20(土)大分会場
廣道純(プロ車椅子ランナー)
MC:とーやま校長(SCHOOL OF LOCK!)
授業テーマ:視点を変えれば、世界は変わる
京都造形芸術大学 至誠館で開催された、未来授業 関西会場の講師は、インターネットの黎明期からモバイルコンテンツや決済事業、3Dプリントの出力サービス事業など、数々の事業モデルを展開し、「ITやIOTで社会と未来を変えていく」企業家であり、京都造形芸術大学教授の小笠原治。
小笠原治は、1900年のニューヨークの写真と1913年のニューヨークの写真を提示し、たった13年で馬車から車へ変わった街と、わずか11年前には存在しなかったスマートフォンを例に、世の中の変化を紹介。そして、「30年前は日本の企業は世界の中でも素晴らしい価値があるとされていたのに、現在は、アメリカや中国のIT企業が世界の時価総額を占めている。だからといって今の日本の家電製品が品質が悪い訳ではなく、彼らはずっと改良に重ねて素晴らしいものを作っていることに変わりない。それはさっきの車の写真でいうと、ずっと馬車を作っているような感じ」と例え、「みんなが欲しがるものを作るチャレンジがしづらい環境ができてしまったのが日本のこの30年。10代・20代は失敗しても許される。まず進める。その上で倫理的に、人間の進化のために良くないと思ったら思いとどまる、踏みとどまる止める勇気を持つ。悪じゃなければ大丈夫。失敗した方が自分の中に定着する」と学生たちへメッセージを送りました。
10/21(日)関西会場
小笠原治(企業家)
授業テーマ:AI時代に、アイデアをカタチにするには
パナソニックの創業100周年記念イベント、「CROSS VALUE INNOVATION FORUM2018」の会場で開催された「東京会場 パナソニックNEXT100 SESSION」の講師をつとめたのは、経済小説『ハゲタカ』シリーズの著者・真山仁。真山仁は、「未来」を考えるときに一番大切なことは「いまを知ること」だと述べ、今日本が絶望のど真ん中にあるのは、「世界の中のニッポンの立ち位置が分かりにくくなったからだ」と続けました。そして、情報へのリテラシーを磨くヒントは「誰が発信したか」だと言います。その例として真山仁は「今の若い人はメディアが発信した情報は疑うのに、役所=権力者が発信した情報は信じてしまう。権力者は一つの方向に情報を流そうとする。疑問をもって自問自答を繰り返すとリテラシーが生まれてくる」と挙げました。最後は、「40歳以上の昭和生まれは、根っから、右肩上がりしか知らない。絶望を語るのはその世代の人たち。若い人たちが、絶望を語る大人に『そういう人はもういらないから、どいてくれ』といわなくてはいけない。その時に必要なのが、いま、何が起きていて、自分たちは現在どこにいるんだろうを知ること、リテラシー」と、若者たちへ投げかけ、講義を締めくくりました。
10/2(金)東京会場 パナソニックNEXT100 SESSION
真山仁(小説家)
授業テーマ:新しい世界を作る勇気
早稲田大学の学園祭・早稲田祭で行われた『未来授業 東京会場 早稲田祭SESSION』は、今年の未来授業を一緒に盛り上げてくれた大学生チーム「未来授業 学生コミュニケーター」の企画・運営で開催されました。 “自分の名前で生きている人”をテーマに、学生コミュニケーターたちが、この人の話を聴きたいと選んだ講師は、ブロガー・作家のはあちゅう、「奢られる」を生業にしている、プロ奢ラレヤー・中島太一、ビジネスモデルやビジネスワードをクリエイティブの力でわかりやすく伝える「ビジネスモデル2.0図鑑」の著者で株式会社そろそろ代表取締役・近藤哲朗。参加学生たちに「大学へは何の価値を見出して価値を払っているのですか?」と投げかけたはあちゅうは、「就活中は、就活で失敗したら人生終わりって思っていたけれど、そんなことなかった。会社を辞めるのは最後の手段と思っていたけれど、そんなことなかった。退職届1枚で辞められる、会社以外の選択肢があるんだ」と述べるなど、3名の講師はそれぞれ、自身の生き方でもある、型にはまらない(企業に就職する以外の)働き方を紹介しました。
11/4(日)東京会場 早稲田祭SESSION
はあちゅう(ブロガー・作家) / 中島太一(プロ奢ラレヤー) / 近藤哲郎(株式会社そろそろ代表取締役)
授業テーマ:“自分の名前”で生きる
タイトル:FM Festival 2018 未来授業~明日の日本人たちへ~ 「“僕らの時代”の生存戦略」
放送日時:2018/11/23(金・祝)16:00~19:00
放送局:TOKYO FMをはじめとするJFN 38局
番組司会:茂木健一郎、とーやま校長(SCHOOL OF LOCK!)
講師:隈研吾 / 山口一郎(サカナクション)/ 池上高志 / コムアイ(水曜日のカンパネラ) / 廣道純 / 小笠原治 / 真山仁 / はあちゅう / 中島太一 / 近藤哲朗
特別参加:尾関梨香(欅坂46)
協賛:パナソニック、昭和電工、川口技研、ソディック、味の素
大分会場
日程:2018/10/20(土)
会場:ハニカムカフェ
講義:廣道純(プロ車椅子ランナー) / とーやま校長(SCOOL OF LOCK!)
関西会場
日程:2018/10/21(日)
会場:京都造形芸術大学
講義:小笠原治(企業家)/ とーやま校長(SCOOL OF LOCK!)
東京会場 パナソニックNEXT100 SESSION
日程:2018/11/02(金)
開場:東京国際フォーラム パナソニックNEXT100会場内
講義:NEXT100 SESSION:真山仁(『ハゲタカ』『アディオス!ジャパン 日本はなぜ凋落したのか』著者)
東京会場 早稲田祭SESSION
日程:2018/11/04(日)
会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 8号館 106
講義:はあちゅう(ブロガー・作家)×中島太一(プロ奢ラレヤー)×近藤哲朗(株式会社そろそろ代表取締役)
東京会場
日程:2018/11/14(水)
会場:TOKYO FMホール
講義 SESSION1:隈研吾(建築家)×山口一郎(サカナクション)
SESSION2:池上高志(人工生命学者)×コムアイ(水曜日のカンパネラ)
特別参加:尾関梨香(欅坂46)
特設サイト
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