ー では、新作『from 0』について。研井さん、率直な感想をお願いします。
研井:いやあ、すごい!緻密なのに考え過ぎてる感じじゃなくて、ナチュラルに出来ているところがすごく美しい。なんかこう、ヨーロッパの建築みたいな曲線美がある。あとは今までと比べて1曲あたりの情報量が多くなった。ちゃんと個々のエゴもあるんだけど、すげえ優秀なチームで、ひとつの目的に対して共通の意識を持ってるっているのが分かる。それはきっと、遼君の采配が美しいんだと思う。だからエゴと目的意識が共存してる。
鴻池:ありがとうございます。確かに、密度は高いと思います。今回は友達のレコーディングエンジニアと2人でスタジオに籠って宅録でミックスも施したデモを作っちゃったんです。リズムパターンとかギターのメインリフとかも全部俺が作って。
研井:そうなんだ!すごい!
鴻池:それをメンバーに聴かせて「ちょっとここは違うのを弾きたい」「なるほど、それはいいね」とかやりとりをして、それぞれのエッセンスを取り入れていきました。
ー まさに研井さんが言った通り、鴻池さんの名采配ということですね。
研井:僕は遼君って、原始的なリズムを組み立てるというより、コードとハーモニーを愛する人なんじゃないかなと思うんですよ。
鴻池:そうですね。コード感とかも、かなり自分の中で作り込んで。このメロディーにはやっぱりこのコード進行、っていうのを頭で考えながら作っていましたね。リズムについては4曲目の「WORLD END LOVER」のCメロで曲が4拍なのに対してドラムを意識的に3拍子にしているんです。こういうのもメンバーでジャムっただけでは決して出てこなかったと思いますね。
研井:なるほど!でもそこまで自分でやって密度高く練って作ると、普通はセッションで出来るものとは違うものになる。それなのにちゃんとバンドサウンドに聴こえるっていうのは、すごいバンドだと思います。自分たちとはベクトルが全然違っていてすごく面白い。僕はリズムが先に出ちゃうから。コードとかハーモニーは後になってしまう。
ー レコーディングについて明からになったところで『from 0』の楽曲について聞いていきたいと思います。それぞれ印象深い曲はありますか?
研井:全部なんだけど、「Discovery」がとても美しい。あと「fronteir」の怪しい感じが良かった。
鴻池:自分は「Hitori Butai Parade」ですね。俺的にめちゃくちゃ自信作だったんですけど、メンバーから評判は最初あんまり良くなかったんですよ。この曲は自分の好きな要素を意識的にキャッチーにするということをしてるんです。だから、わざとAメロから耳に残る感じにしています。
研井:それは出来上がった曲がそういう感じだったの?それともキャッチーなものを作ってわかりやすく伝えようという順番?
鴻池:キャッチーに作って分かりやすく伝えよう、という順番ですね。
研井:それってどういう風に作るの?
鴻池:最初にコードを作って歌ってみて。それをどうしたら新しい感じになるかと考えたときに、めちゃくちゃキャッチーにしてみようと思いついたんです。そのやり方は前作で掴んだ感じがあったので。
ー なるほど。確かに前作はキャッチーでポップであることに注力した印象でした。
鴻池:そうですね。リフレインが頭に残るということも知ったので、歌詞でいうと言葉を繰り返したり。でもそれをサビにしなくてもいいのかな、と「Hitori Butai Parade」ではAメロに持ってきています。それでサビで一気に明るくするという手段を取りました。
ー 他に歌詞でこだわった部分は何かありますか?
鴻池:この曲は人の一生、人間が根本的に考えていることがテーマで。アルバムタイトルに込めた、自分の内側にあるものを探り当てて行きたい、という想いに一番近づけられた曲ですね。
研井:なるほどね。
鴻池:でも今作はそれでいて自分らしさや年齢感を出さないようにしているんです、実はそれを前面に押し出すのは、前作で終わったかなと思っていて、
ー それは自分のうちにある素直な気持ちを大切にしながらも、それを踏まえて曲ごとの世界観を構築するということ?
鴻池:本当にそうですね。難しいんですけど。
ー 確かに。でも素直になることに一生懸命だった前作と比べると、素直さはありつつも良い意味での鴻池さんらしいアクが滲み出ているなあ、という印象です。
鴻池:ありがとうございます。例えばステージに立つとき、フロントマンとして一生懸命な姿をそのまま見せるべきか、それとも敢えて冷たい雰囲気がいいのか。この曲はどっちの方がいいのかな、というのも常に考えていました。今までは熱い魂を持った曲もでも冷めた風で歌ってしまっていたので。そういう部分も一致させていきたいんです。