ー でも、最近はどちらかというとお客さんと一緒に楽しむスタンスのライヴパフォーマンスへと変化していますよね。
研井:確かに。でも僕はずっと一緒なんですよ。だけどやっていくうちに「この方が楽しいな」とか色々気付いたから。僕にとって音楽って祈りみたいなものなんです。強いて言うならそのイメージカラーが変わったのかな。最初は黒だったのが、もうちょっと楽しい色にした方が個人的な祈りではなく皆のものになるなあ、と。
ー 研井さんにとっての音楽表現が、個人的な想いをぶつけることから、皆と共有してゆくものになったということですね。
鴻池:研井さんが前に「他人に対しても気持ちや心を開くことが大事」と話してくれたことがあって。そういう心境の変化がライヴを変えるんだなあ……。
研井:うん。イメージカラーが黒だった頃は諦めもあったんですよ。「どうせみんな黒いと思ってるんでしょ?」って。でもそのイメージ通りにやったからといって何もない。だったら楽しい方がいいなって。
鴻池:なるほど。
研井:あ、楽しいっていうのはちゃんと表現すること。表現を突き詰めること。やっぱり誤解をされたりコミュニケーションを途中であきらめたりするのは嫌だからね。
ー 今の研井さんのお話を聞いて、鴻池さんはARCHAIC RAG STOREのライヴパフォーマンや表現についてどう感じますか?
鴻池:俺もちょっと研井さんと似ていて。前は自分もクールに振舞っていたんです。それはやっぱり心を開けていないからで。口数も少なくて、話すことも適当でした。でも最近、今の21歳という年齢の自分にしか出せないものを出したいな、と思ったんです。
ー それはどうして?
鴻池:前作『EXPLODE』が外に向いて作ったものだったのに対して、今作は自分の内側にあるものを探り当てて行きたいと思ったんです。そしてそこから発信したいという意味を込めて『from 0』というタイトルを付けたんです。
ー アルカイックの曲も、鴻池さん自身も、実年齢より大人びた印象があります。そこが同世代のバンドにはない色気に繫がっているし、アルカイックの特徴だと思うのですが、なぜこのタイミングで「等身大」へのチャレンジを?
鴻池:確かにそこは他のバンドと差別できる武器だとは思います。でも逆に自分たちは青春を売りにしているのか、それともカッコよさを売りにしているのかと言われると、答えづらい。だからそれは弱点だし課題でもあるな、と。でも、ありのままの21歳でロックの本当のカッコよさみたいなものを出せたら唯一無二なんじゃないかと思ってはいるんですけど……。
研井:さっきも言ったけど、遼くんは絶対的な価値がある人。でも、絶対的な価値っていうのは人のハートだから、他人には見えない。それでも、興味を持って生きている人には見えるけど、見えないから分からないって人も多い。じゃあ、分からない人に伝えるにはどうしたらいいだろうって考える。それってすごく価値があることなんだよね。
鴻池:そうですね。
研井:そして遼くんは自然とそれをやろうとしてる。やっぱり芸術家って相手の気持ちを読むというか、目に見えないものを表現するってことだから。だから遼君が生きてロックを続ける限り、遼君の生み出すものに人は感動する。それって素晴らしいことだよね。そういうことが出来る人って少ないと思うから、遼君に出会えて良かったです。
鴻池:ありがとうございます。
研井:葛藤があるのは、僕も同じ。