ライヴハウスを拠点に日々戦うアーティストを紹介するイベント「Ruby Tuesday」。記念すべき10回目となった今回は、初のソールドアウトとなり今年でオープン40周年の新宿LOFTにて開催。BRADIO、phatmans after school、サイダーガール、小南泰葉、と異なる音楽性を持つ4者が熱演を繰り広げた。(Text:蜂須賀ちなみ / Photo:板橋 淳一)
トップバッターはサイダーガール。Yurin(Vocal&Guitar)、知(Guitar)、フジムラ(Bass)、サポートメンバーのkomaki(Dr)はステージ上に姿を現すと弧を描くように向かいあって「よっしゃいくぜ!」と気合いの一音を放ち、「群青」をスタートさせた。開放感のあるメロディラインと芯のある歌声、疾走感の溢れる4ピースサウンドで駆け抜ける全7曲。名は体を表すと言うが、炭酸が弾けるようなピリピリとした感触と、泡が消えてしまうときの切なさ、スッキリとした後味などをそのサウンドに持ち合わせている彼ら。音源を聴いていると爽やかなバンドだという印象があり、その印象はライヴを観ても大きく変わらなかったが、「初めましてこんばんはサイダーガールです、新宿LOFT今日は1日よろしくお願いします!」と昂揚感に任せて一息で挨拶してみせたYurinをはじめ、ときには楽器を振り上げながら渾身のプレイする知、「Ruby Tuesday、@%&#★◎!!」と勢い任せのテンションで叫びながらフロアを煽るフジムラ……と、メンバーの熱い一面も垣間見えた。
MIAN STAGEの転換中にBAR STAGE ACTとして登場した小南泰葉は、2回にわたり弾き語りライヴを披露した。まっすぐな目をした彼女の歌声は、しなやかだけど鋭くて、それでいて女性的なやわらかい響きを持っている。光も闇も残さず暴くような瞬間の連続に、ステージから目を逸らせない。1st setのラストには新宿LOFTの40周年を祝って「HOME」をひときわ温かく響かせたのだった。そして《赤い靴履いてた女の子》の唄い出しが鮮烈な「09電車」で始まった2nd setでは、「ここにいる一人ひとりに届きますように」と切なる願いを込めた「やさしい嘘」、さらに「3355411」とタイプの異なる曲たちを立て続けに演奏。MCにて小南が楽曲提供をしたというLiSA「Halo-Halo」をワンフレーズ唄う、という特別な場面を挟みつつも、この日のラストナンバー「傷」まで、心の揺らぎをそのままなぞるような歌で、名前のない微細な感情をも表現してみせた。
MAIN STAGEの2番手・phatmans after schoolは、自らの感情そのものにアイデンティティを見出していくんだという宣言=「人類への過程」が1曲目。メンバー4人+シーケンスが代願にぶつかり合うサウンドは、音源で聴くよりも良い意味で汗臭い。「無重力少年」以降は、ホンマアツシ(Dr)のビートで牽引するダンスチューンを連投。スタンドから外したマイクに熱を吹き込むようにヨシダタクミ(Vocal,Guitar)が唄い上げた「FR/DAY NIGHT」ではまるでフロアを焚きつけるようにヤマザキヨシミツ(Bass)もギリギリまで前に出て演奏し、「あいまいみー」ではユタニシンヤ(Guitar)がレクチャーしたパラパラ風の振り付けで盛り上がった。終盤では、原点回帰を目指した最新作『アンクロニクル』(5月18日リリース)についてヨシダが語ったあと、新曲「シリアル」を披露。金管楽器の音色も華やかな同曲には、葛藤を抱えながらも未来を切り拓いていく人間の姿をずっと描いてきたこのバンドだからこそ唄えるポジティヴなメッセージが詰まっていた。
そしてラストを飾ったのは、赤・緑・青・黄のスーツがこの日もバッチリキマッていた4人組・BRADIO! 「Are you ready, FUNKY PARTY PEOPLE!? We are BRADIO!!!」「全員両手見せてくれー!」とアフロ頭にサングラス姿の真行寺貴秋(Vo)がハンドクラップを導いていく。グルーヴィーな酒井亮輔(B)&スパイスの効いた大山聡一(G)によるリフとコーラスラインが彩りを加える「Golden Liar」ではコール&レスポンスを展開。さらに「ハートビートを打ち鳴らせ」ではオーディエンスのジャンプによりフロアが終始揺れまくる……と息つく間もないパーティータイムを引き締めながらも刺激的なリズムを鳴らすのは田邊有希(Dr)である。こりゃみんな好きになっちゃうわ!とツッコミたくなるような前半戦、怒涛の展開に、フロアからは大歓声。女性の黄色い声と男性の野太い雄叫びが1:1ぐらいの割合なのも面白い。一転、「Chocolate Flavor」ではブラックミュージックを基盤にしたこのバンドの第2の側面であるほろ苦いテイストがよく表れていた。「意味もないことで盛り上がれるからライヴハウスって最高!」という持論を持つ大山が「BRADIO!」と叫べばオーディエンスが甲高い声で「フゥウウー!!」と返す、というぶっ飛んだやりとりも挟みつつ、アンコールの「Overnight Superstar」まで、タガが外れたようなテンションが続いていく。「今この場所」を目一杯の笑顔で楽しみ続ける人々のことを真行寺が「ナイスファンキー!」と讃えたのだった。
なお、このイベントとリンクしたライブ企画「TUMBLING DICE」はドレスコーズ / GLIM SPANK を迎え6月10日(金)LIQUIDROOMにて行われる。こちらも見逃せないステージになりそうだ。
サイダーガール
1. 群青
2. パズル
3. アンラッキーリビングデッド
4. 夜が明けるまで
5. 夕凪
6. ドラマチック
7. アイヴィー
小南泰葉
<1st set>
1. ぼくを救済するうた
2. 嘘憑きとサルヴァドール
3. HOME
<2nd set>
1. 09電車
2. やさしい嘘
3. 3355411
4. 傷
phatmans after school
1. 人類への過程
2. 東京少年
3. メディアリテラシー
4. 無重力少年
5. FR/DAY NIGHT
6. あいまいみー
7. シリアル
8. ツキヨミ
BRADIO
1. Flyers
2. Golden Liar
3. ハートビートを打ち鳴らせ
4. Chocolate Flavor
5. FUNKASISTA
6. スパイシーマドンナ
EN. Overnight Superstar
日程:2016/04/26(火) 18:15/19:00
会場:新宿 LOFT
出演:BRADIO / phatmans after school / サイダーガール
BAR STAGE ACT:小南泰葉
Ruby Tuesday Official HP
http://www.red-hot.ne.jp/ruby/