ー 白井さんの言葉で印象的だったことは何かありますか?
佐藤:「僕が5人目のビードローズになるならば…」というところから話を始めてもらったのはすごく嬉しかったですね。バンドって、友達でもなく家族でもない、でもすごく深い間柄っていう、得体の知れない共同体な部分があると思うんですけど、メンバー間の関係性とか、言葉にできない空気をよく理解してもらえたというか。どんな場面でもすごくポジティブに制作を進めていく姿に、とても救われました。
ー「風に歌え」は、アレンジも白井良明さんが手がけられたということですが、レコーディングはどのように進んで行ったのでしょうか?
佐藤:僕が作った曲の骨格を、良明さんが勢いのある楽曲に仕上げてくれました。良明さんは音楽的な面は超一流なので、アレンジはもちろん素晴らしいんですけど、それ以上に歌詞に対するジャッジは厳しくて、何度も何度も書き直しました。僕が内側に持っているのに伝えきれなかった想いを呼び起こしてくれて、それを聞き手に伝わるように繋いでくれる。『歌詞・構成会議』というのを何度も開いてくれて(笑)。
ー ある種、古臭いけれどもストレートに伝わってきます。長い歌詞の随所に、いろんなメッセージが隠れていますね。
佐藤:みんな、このもやもやとした時代の中で、仕事や学校や家庭、そして自分自身と、いろんなバランスの上に立っていて、それこそ奇跡的に正気を保って生きていると思うんです。心で思っていても、口には出せない思いって、大なり小なり、誰もが抱えていますよね。バランスを崩して塞ぎ込んでいる時も、きっと風は吹いている。そんな気持ちを込めて書いた歌です。風が背中を押すように、そっと誰かの力になれればと。達観しているわけではなく、もがき続ける姿なんです。
ー それはこのアルバムを通じて、発信しているメッセージでもありますか?
佐藤:その通りです。僕自身、未だに、毎日を生きることに対してすごくもがいたり、あがいたりしているんですけど、音楽によって救われている。これをまた音楽で循環させていきたいんです。今回のアルバムは真面目な部分があり、ちょっとふざけている曲もあり、いろんなシーンに合うサウンドトラックのような作品を目指したので、聴いてくれるみなさんの毎日に響くといいなぁと思っています。
ー そういう想いがある中で、今回、アルバムのタイトルを、「DRY AND MELLOW」とした理由は何でしょうか?
佐藤:最初はサウンドの方向性を決める時にメンバーから出てきた言葉なんです。レコーディングの途中で、乾いた感じの音作りになっている曲もあれば、とても芳醇な、湿度を感じる曲も出てきた。相反する言葉のようだけど、良い時も悪い時も、なんとか4人で乗り越えて音楽を続けてきた僕らにぴったりなアルバムタイトルかなと。DRYは渇望、MELLOWは芳醇な音。両方が共存するアルバムなんです。