最終日、8/31(日)は”Originator’s CAMP”。高橋幸宏ファミリーが集結し、音楽好きのオーディエンスが詰めかけた。オープニング・アクトは、藤原さくら。「この3日間、皆勤賞です。全部のライブを観ました」と挨拶して、Slow Music Slow LIVE初参加の歓びを込めて歌う。歌詞の世界は暗いのだが、太くて豊かな声が彼女の可能性を示していて、印象的なパフォーマンスとなった。(PHOTO:TEAM LIGHTSOME)
チャラン・ポ・ランタンは成長のスピードを感じさせた。バンドの紹介を兼ねた「忘れかけてた物語」でライブをスタートさせると、植木等のカバー「スーダラ節」など、ノスタルジックで特異なキャラクターを全開にする。“スロー”とは決して言えない持ち味を逆手にとって盛り上げたのは見事。最後の「愛の賛歌」で実力をチラリと見せる演出も決まっていた。
一転して青葉市子は、シニカルで美しい世界を現出させる。弾き語りで4曲歌った後、ゲスト・ギタリストの小山田圭吾が加わった「日時計」は、非常にインスピレーショ ンに富んだ内容で、オーディエンスに白昼夢を見せるほどだった。鋭いリリックと、エフェクトを駆使したサウンドは、たった二人で空の色さえ変えてしまいそうな迫力があった。
Curly Giraffeと高田漣のコンビは、生楽器と声で形作る音楽の良さを堪能させてくれた。高田の操るマンドリン、ペダルスティール、バンジョーが、Curlyの声を見事に彩る。海外のシンガーソングライターの良さを徹底的に追求しなが ら、本門寺に似合うサウンドを奏でるのは、高い実力の証明だろう。ラストの「96708」 は堀江博久がピアニカで参加して、いつまでも聴いていたくなるセッションが展開された。
このイベントの常連になっている持田香織は、アコーディオンとコントラバスが独特の世界を生む注目の京都のインディーズ・デュオ“mama!milk”を従えて登場。いきなりELTの 「Time goes by」をアコースティック・アレンジで聴かせて、新生面を意欲的にアピールする。ライブの最中にバックとのコミュニケーションがどんどん進化して、ラストの「静かな夜」では、会場を彼女の色に完全に染め上げた。
高野寛は、ドラム宮川剛、 ベース鈴木正人のトリオ編成で、ブラジル録音の最新アルバム『TRIO』からの曲を演奏。さらには担当したCM音楽「DAKARA」 や、「虹の都へ」「ベステンダンク」を披露して25周年を迎えた喜びをオーディエンスと分かち合う。「夢の中で会えるでしょう」ではシンガロングが起こって、会場を埋めたオーディエンスの高野に対する愛情の深さが伝わってきた。
いよいよ高橋幸宏が、ギター佐橋佳幸とキーボード堀江博久の二人の名手を伴って現われる。注目の1曲目は、ニール・ヤングのカバー「Helpless」だった。オンタリオの空に昇る月と、現代の無力感を描く名曲だ。イベント最後の夜にふさわしいミディアム・バラッドに、会場はしーんと聴き入る。3日間のイベントで最高のオープニング・ナンバーとなった。ゆるゆるとライブを進める幸宏と、秋を感じさせる風のマッチングがいい。オリジナルやランディ・ニューマンのカバーなど、“大人のミニフェス”ならではのステージングとなった。アンコールは高野寛とCurly Giraffeが加わって、トッド・ラングレンの「I Saw The Light」で素晴らしいコーラスワークを聴かせてくれたのだった。
新しい試みも含めて、11年目を迎えたSlow Music Slow LIVE。音楽好きの大人の夏を締めくくるイベントとして、ますます定着、進化していくことだろう。
日程:2014/08/29(金)〜31(日)
会場:東京 池上本門寺・野外特設ステージ
8月29日(金)「Mysterious Moon」
出演:Salyu / 中納良恵(EGO-WRAPPIN’)
Opening act:久和田佳代
8月30日(土)「Rainbow Beat」
出演:佐野元春 & The Hobo King Band / ORIGINAL LOVE(アコースティックセット) / BONNIE PINK / 土岐麻子 / Caravan / ハンバート ハンバート
Opening act:古川本舗
8月31日(日)「Originator’s CAMP」
出演:高橋幸宏 with 佐橋佳幸、堀江博久 / 持田香織 / 高野寛TRIO(鈴木正人・宮川剛) / Curly Giraffe with 高田漣 / 青葉市子 Guest:小山田圭吾 / チャラン・ポ・ランタン
Opening act:藤原さくら
イベントサイト
http://lultimo.jp/smsl/