1月21日、ARCHAIC RAG STOREの新EP『from 0』がライヴ会場限定で発売される。今作は鴻池遼(Vo/Gt)が「21歳のありままの自分」と向き合い、「自らの内側にあるものを探り当てていくこと」で生まれたと語る意欲作だ。持ち前の美しいメロディーと色気はそのままに、前作で培われたポップな表現にも磨きがかかった。そんなバンドの新定番とも成り得る1枚を、鴻池が真っ先に聴かせたのは憧れの先輩。3ピースの枠に捕らわれない強靭なグルーヴが特徴のロックバンド、The cold tommyのヴォーカルギター・研井文陽だ。鴻池のラヴコールにて実現した本対談では『from 0』の製作秘話から、「伝えること」の極意、果ては女性観までを2人のフロントマンが語り尽くす。
取材・文:イシハラマイ
撮影:Sumika Tsuchiya
ー 出会いはいつごろなんでしょうか?
鴻池:約5年前ですね。俺はARCHAIC RAG STOREの前身バンドで良く下北沢のDaisy Barに出ていたんです。そこで出会ったTHE BLONDIE PLASTIC WAGONに誘われてブロンディーとThe cold tommyのツーマンを観に行ったのが最初です。それで、とても衝撃を受けて……。そこから何度か対バンさせていただいて、今に至ります。
研井:そっか、それが初めてだっけ?(笑)
鴻池:はい。鮮明に覚えています。
ー The cold tommyのどんなところに衝撃を受けたんですか?
鴻池:自分の中でカッコイイと思うロックのパターンがあって。そのひとつが「背徳的であること」なんですよ。見ちゃいけないものを見ているような気持ちにさせられる感覚。最近のトミーは皆を取り込んで一緒にやろう、というスタイルですけど、当時は突き放す感じで殺気立っていた印象だったんです。そしてその狭い薄暗いライヴハウスのフロアを埋め尽くすお客さんが酒を片手にそのパフォーマンスに熱狂して叫んでいる。その光景を目にした時、自分の中で踏み入れちゃいけないアンダーグラウンドに来たという感覚になってすごく刺激を受けたんです。
ー 当時、鴻池さんは15、6歳ですよね。確かに日常の学生生活とはだいぶかけ離れたシチュエーションだと思います。バンド活動を始めてどれくらいの頃だったんですか?
鴻池:1年半くらいですね。結成当時からライヴハウスにも出ていたんですが、自分たちがやるとガラガラなんですよね、毎回。でも初めてトミーを観たそのときは満員で。しかも研井さんは当時、黒いスーツを着ていて髪も長くて目が殆ど隠れていて。もう、ダークさしかないんですよ。漫画の登場人物みたいにアングラで危険な世界の象徴という感じで、とにかく圧倒されました。
研井:今、漫画の登場人物みたいって言ってくれたけど、僕も同じ。遼くんは王様の風格があるなって。キャラクターとして、人間として絶対的な価値と存在感を感じるんだよね。だから「僕らで新しい世界を作ろうよ」って話をしたのは覚えてる。
ー 鴻池さんの感じた「背徳的」「アングラ」という印象について、研井さんはどう思いますか?
研井:それいいね。カッコイイ。自分もその方が好きだし。