2016.05.15

榊いずみ、新曲「キッチン」インタビュー!グルーヴから生まれるものがいい。音楽も、人のつながりも。

Beadroads 榊いずみ

92年に「橘いずみ」でソニーレコードからデビュー。90年代にはその言葉の鋭さや繊細さ、唯一無二の尖ったライブパフォーマンスを女尾崎豊と称され、孤高のアーティストとして名を馳せた。ここ数年miwaや、ももいろクローバーZとの共演で、鮮烈な名曲「失格」を耳にした新しいリスナーも多いだろう。神聖かまってちゃん・の子を始め、彼女をリスペクトする若いロックミュージシャンも多い。先日もカラーボトル竹森マサユキ(カラーボトルのアルバムで橘いずみの「太陽」をカバー)などが出演、彼女を慕うフォロワーたちによる「橘いずみトリビュートライブ結局はひとでなし」が開催された。昔からのファン、そして新たに橘いずみ、榊いずみの音楽に触れる人の心を揺さぶってやまない。それが彼女の音楽。

榊いずみ
Photo:兵藤冬樹

そして今回、メーテレ(名古屋テレビ)の連続ドラマ「まかない荘」(主演:清野菜々、菊池亜希子、月曜23:20〜放送中)主題歌として書き下ろされた「キッチン」をリリース。

ギラリと光るセンシティブなイメージとは別のベクトルの、おおらかさな強さ、女としてのやさしさがあふれた曲に仕上がっている。そして、そんな雰囲気にシンプルなロックンロールがよく似合う。派手なアクセサリーで飾り立てていなくても、小さなピアスを付けてシンプルな格好でそこに凛と立っているだけで目を奪われる女性。この「キッチン」という曲にはそんな女性が浮かぶ。相手を励ましている言葉は上っ面だけじゃなく、たくさんの哀しさを経験した心からの声として聞き手を包み込む。

結婚を機に「榊いずみ」に改名し、来年、橘時代から数えて25周年を迎えるが、ますます衰えない楽曲の魅力、そして変わらない創作力をインタビューしてみた。(文・インタビュー:井上恭子)

ー この曲が生まれたきっかけはなんですか?

榊いずみ

榊:まずこの曲を作るにあたって、ドラマ「まかない荘」の主題歌というのが頭にありました。清野菜々さんと菊池亜希子さん演じる姉妹が、ご飯付きの下宿を経営していて、そこに住むさまざまな人たちと「食卓」というものを通して起こる人間模様。毎朝毎晩、顔を突き合せるテーブル、しかも他人同士。どんなことが起こるんだろうとワクワクしてました。もちろん分かり合えないもどかしさもあるし、仲良くなりかけた証拠の喧嘩というのもあるだろうし、それぞれの生活をかいま見てちょっと首突っ込んで、とか。それでも同じ釜の飯じゃないけれど、まぁ色々あるけど、とりあえずごはんたべようよっていうのがおもしろいなぁ、と。それで解決しちゃうことって実はとても多い気がします。

ー そんな下宿、本当にあったらいいですね(笑)。

榊:ほんと、住みたいですよ(笑)。ないですかね?

ー 榊さんはご家庭もあり。ドラマ「まかない荘」はご主人の榊英雄さんが監督されているそうですね。

榊:そうですね、三人分まかない作る方で(笑)。主人は忙しくしていて、最近はなかなかうちでご飯を食べるタイミングがないんですけどね。何度か撮影現場に遊びに行ったのですが、とてもよい雰囲気でしたね。主人も楽しそうでした。

やっぱり食卓というのは大切な家族の儀式みたいなところがあって。今日なにしてた?とか、なに楽しかった?とかなんでもないことをのんびり話すいい時間ですよね。それが日々たわいもないこと話してても、いつか大変なことがあって上手く話せないときでもその積み重ねのおかげで乗り越えたりできるんじゃないかなぁ、とふと思ったりも。家族のグルーヴが生まれると、キッチンの歌詞じゃないですけど”話をしなくても”食卓を囲むことで心に寄り添えたりできるかもしれない、なんてね。でもなかなかそんなにおおらかに構えられないところがありますけど。どうした、どうした?!ってね、絶対言っちゃう(笑)

ー どこか歌に出てくる女性は、イタリアにいるようなおおらかな女性を想像しましたね。

榊:そうですね。おいしいものすぐ作るからとりあえず待ってろ!って、綺麗な格好しているのにいきなり髪を留めて、キッチンに立ってちゃっちゃっと湯気がほかほかのおいしいもの作っちゃう感じ、理想ですね。人としてもう素晴らしいスキルだと思う。何も敵わないです

ー 今回、言葉を選んだりするときに気をつけたことってありますか?

榊:みんなが分かりやすいシンプルなものにしようと思いました。言葉のギミックに凝ったものじゃなくて、子供でもわかるような。でも大人にしかわからない人生のコツみたいなことはそこに込めたかった。自分もちょくちょく忘れてしまうので(笑)。覚書みたいな気持ちもあります。大事なことを心に決めたら、ちょっとしたことはもう大目にみよう、とかね、意外と忘れるんですよ。あとユーモアも忘れずにね、とかね。自分に言ってる(笑)

ー ほんと、そういうことって大人ほどすぐ忘れますよね(笑)。サウンドもシンプルでいいですね。言葉とぴったり密着している気がします。

榊:そう、レコーディングはずっと一緒に曲を作ったりライブをやったりしている佐藤亙くんのバンド、Beadroads(ビードローズ)とセッションしました。なにかバンドが持っているグルーヴみたいなものがこの曲に合うんじゃないかと思って。その場のセッションだけでは出せない行間みたいなもの、それがグルーヴだと思うんです。それこそ、同じものを食べたり、見たり体験したりするうちに合ってくる呼吸というのかな、そういう音が欲しかった。Beadroadsは繊細な曲も多いんですけど実はロックンロールで生き生きするバンドでね、そういうところがいいんですよね。


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